2024.03.22

たんぽるぽる - 雪舟えま

 みにおぼえないほどの希望に燃えて目覚めてもあと二万回の朝?

 こういう歌が結局好きなのだと思う。いつでもすぐに理解できるし、理解できるだろうという確信によってなんとなく安心がもたらされる。誰もに薄く絶望していてほしいのかもしれない。宇宙の果てしない暗がりに覆われていてほしい。ほしい、というか、どうしてそうじゃないのか、と思う(いつも思うけれど、ほしい、という言葉は自分の感情に比してやや強すぎる力を持って波及しているような気がして困る)。幸福であってほしいと思うのと同じくらい。でもみんなが死にたかったら自分も死んでしまうほかないと思う。死ぬことが本当に可能かどうかは別にして。

 どうしても他者が何かを名づける方法やその名前を注視してしまう癖がある。少なくともこの人の題名の付け方はわりと好きかもしれないと思った。炎正妃、魔物のように幸せに、たんぽるぽる。

 久々に歌集を読んだ。久々に触れる短歌の韻律に、以前ほどの親しみは覚えられなかった。またいつかうまく巡りあえるだろうか。巡りあいたいという言葉にできるほどの自信がない。いつもと同じようにわからない。

 

 どうしたら自分自身という偏執狂をものともせず耐えうるような物語が作れるのだろう、と思いながら生きているような気がする。

 作品に触れても結局自分の話しかできない。それがなんだか嫌でどうにかしたいと思う。でも本当のところどうしたらいいのかわからない。ほかのあらゆる物事と同じように。

 だらしなく緩んだイメージがぼやけて重なっているだけのそれはたぶん絵画的で、たぶん絵画ならある程度は許されるもので、恐らく自分は自分の言葉に向いていない。

 美しいものを見ていたい。みたいな言葉にしかならない。まだ生きているということをかろうじて説明できるかもしれない言葉。